同時通訳士・松下佳世さんの編著書「同時通訳者が『訳せなかった』英語フレーズ」に、「経験が不十分」「未熟者」といった意味を表すフレーズが紹介されていました。

語だけを見ると、「未熟者」といった訳はちょっと出てこない慣用句です。


同時通訳者が「訳せなかった」英語フレーズ(Amazon)


このコンテンツでは同書の78~79ページを参考に、その由来なども紹介します。(この本はとても面白いですよ!)

wet behind the ears=「未熟な、経験の浅い」由来は?

日系IT企業によるコンペティションが開催されました。対象は国内外の企業や大学生です。
 
その懇親会でこのような場面がありました。

懇親会では、日系IT企業のチーフ・インフォメーション・オフィサー(CIO)の通訳を担当しました。
 
CIOはアメリカ人女性で、このコンペティションの審査における中心人物でした。
 
(中略)
 
しばらくして彼女が酔っ払ってきたころに、参加した日本人大学生チームが彼女に挨拶にきました。
 
チームは残念ながら優勝は逃したものの、「アイデアは素晴らしかった」とCIOは健闘をたたえました。
 
そしてウインクしながら、You all are still wet behind the ears.と一言。と同時に、一人の大学生の耳の後ろを手で触り、水を振り払うようなジェスチャーをしたのです。

「耳の後ろが濡れている」ことがなぜ「未熟・経験の浅い」を意味するのでしょうか?
 
本書の解説です。

実はこの慣用句、もともとはドイツ語のnoch nass/feucht hinter den Ohrenが語源で、そのままstill wet behind the ears(まだ耳の後ろが濡れている)と英訳されたものです。
 
新生児、もしくは生まれたばかりの子牛や子馬が羊水に濡れている状態を指しており、看護師や助産師が体を拭いたり、母牛や母馬が体を舐めたりして、最後に乾くのが耳の後ろであることが由来だそうです。
 

字面だけではこの訳はちょっと出てきません。
 
しかし日本でも放牧や畜産が盛んな地域ではこれに似た表現があるかもしれませんね。