grandfatherは言うまでもなく「おじいさん」ですね。
 
これを動詞で使うとどのような意味になるでしょうか?


 
私はこの用法を知らなかったのですが、発祥はものすごく昔にさかのぼるそうです。
 
同時通訳士・松下佳世さんの編著書「同時通訳者が『訳せなかった』英語フレーズ」56~57ページから、この用法についてのエピソードを紹介します。
(この本はとても面白いですよ!)


同時通訳者が「訳せなかった」英語フレーズ(Amazon)

grandfather(ing)「既存のものを新しい条件や規則の対象から外す」

結論から書きますと、動詞のgrandfatherとは「既存のものを新しい条件や規則の対象から外すこと」です。
 
環境問題やIT関連の話題で使用されます。

環境関連の会議で「グランドファザリング」と出てきたら、温室効果ガスの排出枠の「実績割当方式」のことですし、金融分野であれば、新たな規制を導入する際の「経過措置」を意味します。

grandfather(ing)はIT分野でも使われます。

ある日、外国人講師によるIT系の講義の通訳をしたときのことです。
 
講師のif you choose to grandfather your existing data…という発言を、いつものように「既存のデータをグランドファザリングする場合には…」とingを付けてカタカナで訳出しました。
 
ところが、あいにくデータの世界に「グランドファザリング」なんて用語は無かったようで、受講生の一人からすかさず「グランドファザリングって何ですか」と質問を受けてしまいました。
 

動詞としてのgrandfatherはビジネスの世界では意外と頻繁に使われているようです。

講師の説明によると「データのグランドファザリング」とは「ある条件を新しいデータにのみに適用し、もともとのデータは対象外とすること」を指すのだそうです。
 
例えば、ある会社が商品を一律5%値上げするとき、既にシステムに登録されている在庫品は処理の対象外とし、これから新規に登録する商品にのみ適用する、といったケースです。

動詞のgrandfather(ing)ってかなりユニークな使い方ですよね。
 
こうした用法が生まれたのは、何と19世紀後半、アメリカで憲法修正条項が成立した頃までさかのぼるそうです。
 
松下さんの本にはその経緯が解説されているので、気になる方は手に取ってみて下さい。