英語って、動物が出てくるフレーズが意外と多いですよね。
elephant in the roomもそのひとつです。「部屋の象」とはどういう意味でしょうか?
通訳士・松下佳世さん編著の「同時通訳者が『訳せなかった』英語フレーズ」146~147ページを参考に、このフレーズについて紹介します。(この本はとても面白いですよ!)
Elephant in the room=触れてはいけない問題、気まずい話題
Elephant in the roomは「タブー」とも訳されるでしょうか。
Elephant in the living roomも同じ意味で使われることがあります。
これは米国企業の社内会議で使われたそうです。
その日の通訳現場は、アメリカの商業不動産会社での会議でした。
(中略)
アメリカ本社はコスト削減のために従業員のリストラを計画し、日本企業側はその計画に反対。そこで日本企業の代表者数人と弁護士がアメリカ本社に出向き、話し合いを持つことになったのです。
従業員のリストラといえば、気まずい話題の最たるもの。
会議はリラックスしたムードで始まったようですが…
会議の日はちょうどクリスマス休暇前だったので、クリスマスプレゼントや休暇の過ごし方などの話題で、和やかに会議がスタートしました。
しばらくして会話が一段落すると、会議の進行係をしていたアメリカ人マネージャーが、Well, shall we talk about the elephant in the room?と切り出しました。
その場の雰囲気から、これから本題に入るのは予想がつきました。
でも「部屋の中にいる象」って一体?
一瞬間が空きましたが、とりあえず「では、大切な話をしましょうか」と訳出しました。
このフレーズの由来には諸説あります。
この慣用句の語源ははっきりしていません。
諸説あるようですが、最も古い説は、ロシア人作家、イヴァン・クルイロフが1814年に書いた寓話、The Inquisitive Manに由来するというものです。
ある男が博物館に行き、さまざまな動物や昆虫の展示物を詳しく見て回ります。
ところがそこに展示されていた大きな象の展示にはまったく気づかなかったという話です。
その後、ほかの小説や物語、ミュージカルにも広まり、新聞や広告などのメディア媒体でも広く使われるようになったようです。
由来はどうあれ、部屋に象がいたら「触れてはいけない」も何もないだろ、という気もしますが、それが慣用句というものでしょうか。
松下さんの本にはelephantを使ったその他のフレーズも紹介されています。
see the elephant(人生経験を積む)
see pink elephant(酒に酔う、幻覚を見る)
a white elephant(無用な長物、やっかなもの)