「舌の根も乾かぬうちに」に当たる英語をネットで調べると、No sooner ~を使った例文が出てきます。
同時通訳士・松下佳世さんの編著書「同時通訳者が『訳せなかった』英語フレーズ」に、これとは別の表現がありました。
このフレーズは「舌の根も乾かぬうちに」以外にも意味を持つようです。
同書の74~75ページから一部を抜粋して紹介します。(この本はとても面白いですよ!)
「舌の根の乾かぬうちに」はin the same breath
やっぱりというか、「舌の根の乾かぬうちに」はポジティブではない文脈で使われました。
ある会議でこの表現が出てきました。ある会社のアメリカ人エグゼブティブは、言うことがその時々でコロコロ変わることが有名で、先週と今週、あるいは会議の最初と最後で言っていることがまったく逆であることが珍しくありませんでした。
社員たちは、彼の指示の内容が変わるたびに、それまでの仕事が無駄になるなど、不満が溜まっていました。
通訳していても「?」と感じる指示だったようですが、そこにツッコミを入れるわけにはいきません。
そんなある日の定例会議。いつものようにその日の(瞬間の)気分で好き勝手な、そして時には無茶な指示がどんどん降ってきます。
訳しながら「えっ?」と疑問に思ったものの、そこは通訳者。私情をからめず、彼の声となって訳しました。
なんとか会議が終わり、当人がさっそうと会議室を去っていった直後、ある参加者がポツリと言いました。
He gives a go-ahead and then tells us to stop in the same breath.
in the same breathは、別の意味でも使われます。
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「矢継ぎ早に」などの意味でも使われる
「舌の根も乾かぬうちに」とはニュアンスの違う訳があてられることもあります。
鍵となるフレーズin the same breathの直訳は「同じ息で」。つまり、一つのことを言ったすぐあとに別のことを言う場合にも使われます。
文脈によっては「一度に」とか「矢継ぎ早に」という訳も可能です。
(中略)
また、in the same breathをマクミラン英英辞典で引くと、前述の用法とは別に「同じような二人の人、もしくは二つのものについて言う場合、両方が似ているので一緒に言及する」との使い方も載っています。
Taylor found it very flattering to be mentioned in the same breath as some of her faborite artists.(テイラーは、自分が大好きなアーティストたちとともに名を連ねられたことをとてもうれしく思った)
冒頭の「No sooner~」表現でもいいですが、in the same breathもイメージしやすく覚えやすいので実用的ですよね。
言うことがコロコロ変わる人に遭遇したら使ってみて下さい。(あまり会いたくないですが…)